手をつながなくなった日

七五三
三歳の七五三の写真を見ると、
娘はほとんど全部の写真で、私の手を握っている。
慣れない草履が歩きにくかったのだろう。
境内の砂利道でも、
階段でも、
「ママ、待って」
と言いながら、小さな手でぎゅっと握ってきた。
あれから四年。
七歳になった娘は、
朝の支度も、着替えも、ずいぶん一人でできるようになった。
七五三の日。
着物姿の娘を見て、
「大きくなったなあ」
と思った。
けれど本人は、そんなことにはお構いなしで、
鏡の前で髪飾りばかり気にしている。
慣れない着物で無理をさせたくなくて、
この日は自宅からリモートでご祈祷を受けることにした。
画面の向こうから祝詞が聞こえてくる。
娘はいつもの家だからか、
思っていたよりも落ち着いて座っていた。
ご祈祷を終えて、
晴れ着姿の娘と家族で写真を撮りに出かけた。
途中、
「手、つなぐ?」
と聞いてみた。
娘は前を向いたまま、
「大丈夫」
と言った。
それだけのことなのに、
少しだけ寂しかった。
小さいころは、
早く一人でできるようになってほしいと思っていた。
靴を履くのも。
ごはんを食べるのも。
朝の支度をするのも。
何度、
「自分でやってみよう」
と言ったかわからない。
その願いは、
ちゃんと叶っている。
なのに、
親というのは勝手なものだと思う。
七五三のご祈祷を受けながら、
ここまで元気に育ってくれたことに感謝した。
そして、これからも健やかでありますようにと願った。
その一方で、
もう少しだけ、ゆっくり大きくなってくれてもいいのに、と思った。
帰り道。
人の多い横断歩道の手前で、
娘が急にこちらへ手を伸ばした。
何も言わず、その手を握る。
三歳のころより、
少し大きくなった手。
信号が青になる。
娘は私の手を引くようにして、歩き始めた。
いつか本当に、
この手をつながなくなる日が来る。
その日まであと何回、
こうして手をつないで歩けるのだろう。
そんなことを考えながら、
少しだけ、
歩く速度をゆっくりにした。
誰かを想った日のこと。
もし、心に残る出来事がありましたら、
よろしければお聞かせください。
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