はじめての一歩に、良いご縁がありますように

縁結び
この春、入学祝いの席で、従妹からこんな話を聞いた。
受験を控えていた従妹に、叔父がリモートで合格祈願を申し込んでくれていたのだという。
「まさかそんなサービスがあるとは思わなかった」
従妹はそう言って笑っていた。
そのときは、「そんな方法もあるんだな」と思ったくらいだった。
それからしばらくして、今度は自分が新しい生活を迎えることになった。
来週から、いよいよ社会人になる。
就職活動のときは、とにかく内定をもらうことに必死だった。でも、いざ入社日が近づいてくると、少しずつそわそわした気持ちが混じり始めた。
どんな上司に当たるのか。
同期とうまくやっていけるのか。
配属先は、どんな雰囲気なんだろう。
楽しみでもあり、少し落ち着かなくもある。そんな気分だった。
実家を出て、慣れない街で一人暮らしを始めることも決まっていた。
これから仕事をしていく中で、どんな人たちと出会うことになるのか。
自分ではどうにもできない「巡り合わせ」のようなものに、こんなに気持ちを持っていかれるとは思っていなかった。
ふと、従妹の話を思い出した。
調べてみると、同じサービスで「縁結び」のご祈祷もお願いできることがわかった。
恋愛のイメージが強い言葉だが、良い人間関係や巡り合わせ全般を願うものでもあるらしい。
それなら、自分にも合っている気がした。
これから始まる仕事で、良い人たちと出会えますように。
引っ越したばかりで、まだ段ボールの残る部屋で、スマートフォンからライブ配信につないだ。
祝詞を聞きながら、これから出会うことになる、まだ顔も知らない上司や同僚のことを、なんとなく思い浮かべた。
数日後に届いたお守りは、新しく買ったビジネスバッグの内ポケットに入れた。
入社式の朝、電車に乗り込んでから、バッグの中のお守りに一度だけ触れた。
これから出会う人たちは、まだ誰も知らない。
どんな上司で、どんな同僚で、どんな毎日が待っているのかもわからない。
でも、不思議と少しだけ楽しみになっていた。
良い縁に恵まれますように。
そして、自分も誰かにとって、良い縁になれますように。
電車を降りると、会社へ向かう人たちの流れに加わった。
少しだけ胸を弾ませて、新しい一日へ歩き出した。