納車の日に、家族の安全を願って

交通安全祈願
去年、子どもが生まれてから、車を持つことを本気で考えるようになった。
先日も、急な発熱で夜間の小児科に駆け込もうとしたとき、なかなかタクシーがつかまらず、抱っこした子どもの熱い体を感じながら途方に暮れたことがあった。
これまでは電車と徒歩でなんとかなっていた。でも、子どもが生まれてから、車がないことを心もとなく感じる場面が少しずつ増えていた。
半年ほど悩んだ末、ようやく新車を注文した。
そして、待ちに待った納車日が決まった。
ただ、納車は平日の午前中。その日は普通に仕事がある。
交通安全祈願は、車に乗り始める前に受けておくものだと聞いたことがあった。とはいえ、平日に神社へ足を運ぶ時間はどう頑張ってもつくれそうにない。
かといって、何もしないまま家族を乗せて走り出すのも、どうにも落ち着かなかった。
妻からも、
「せめてお祓いくらいはしてから乗ってほしいな」
と言われていた。
隙間時間に「交通安全祈願 オンライン」で検索してみると、リモートでご祈祷を申し込めるサービスが見つかった。
納車当日、お昼休みを使って一度家に戻った。
朝のうちに届いた新車が、車庫に停まっている。
運転席に座り、スマートフォンを立てかけてライブ配信につないだ。
神職の方が「交通安全」の祈願文を読み上げる声が、まだ新車特有の匂いが残る車内に静かに響く。
その声を聞いているうちに、これからこの車に乗せることになる妻と子どもの顔が、自然と頭に浮かんだ。
安全に、帰ってこられますように。
数日後に届いたお守りは、運転席から見える場所に大切に収めた。
そして迎えた、家族を乗せて初めて出かける日。
妻が子どもをチャイルドシートに乗せ、後ろのドアを閉める。
運転席に座って、シートベルトを締めた。
いつもより少しだけ丁寧に、ミラーを合わせる。
後ろを振り返ると、チャイルドシートの子どもと目が合った。
エンジンをかけて、ゆっくりと車を走らせた。
これから、この車でいろんなところへ行くんだろう。
まずは、安全に。
家族みんなで、帰ってこよう。